この本は、渋沢栄一氏の口述をまとめた『論語と算盤』(1916年)を現代語訳したもの。
NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公、そして2024年発行予定の新紙幣にも登場予定で、名前を聞くことも多くなってきましたが、その人となり、あるいは考えに触れる機会がなかったので、今回手に取って読んでみました。
100年以上前に刊行された書籍ですので、今とは時代背景は異なりますが、平易な現代語訳ということもあり、そういったことを感じずに読み進めることができました。
読了して感じたのは、まずは、渋沢栄一氏が非常にバランス感覚に優れた人であったということ、そして、学び心を磨くということを非常に大切にしていたこと。
論語と算盤とは、道徳とビジネスを調和させ、ふたつのバランスをとらないと社会は健全に発展しないという考えに基づいたものと理解しました。
書かれていることは、一見当たり前のようにも感じられ、自己啓発本のようでもありますが、順を追って丁寧に読んでいけば、どう人生を歩んでいけばよいかを示してくれます。ぜひ多くの人に読んでほしいものです。
訳者による巻末の渋沢栄一小伝も必読です。
1840年生まれの氏が、尊王攘夷の志士として幕府討幕を企てたのちに、一橋家の家臣として徳川慶喜公に仕え、幕臣としてフランスへ渡航。明治維新後は明治政府の官僚となり、のちに実業人として産業界と公益事業に足跡を残したという、まさに日本の近代の父というべき働きっぷり。日本の近代が身近に感じられました。
最後に女性にだらしなかった、ということも判明して人間味も。
現代語訳によって割愛されている部分もあるようなので、角川ソフィア文庫の原文版にもあたってみようと思います。
また、この本の根底にあるのは論語であり、本書でも、徳川家康公が遺した『神君遺訓』が論語からきていることが書かれていましたが、あらためて論語にも興味がわきました。